代表が語る:XVLの起源(後編)

  1. ラッティーとティースのラティスなぜなに

こんにちは。人事のきういです。
今回は代表の鳥谷へのインタビュー後編です。

前回はこちら

ーここまでXVLを製造業に活かしていこうと決めた経緯をお伺いしましたが、さらに「3Dで世界を変える」「Casual 3D」というビジョンや理念をかかげるきっかけは何だったんでしょうか。
前職でDESIGNBASEを作った経験です。これはソリッドモデリングカーネルというもので、ソリッドモデルは3次元の形状表現の基本、カーネルはその基盤となるソフトウェアのこと。3次元CADのカーネル部分、基盤になっているのがDESIGNBASEでした。当時競合していたのがParasolidというソフトウェアで、それにグローバル競争で敗れたのです。

これではだめだ、と悔しく思って「世界に通用するソフトウェアを作らなければ」とラティス・テクノロジーを経営してきたんです。
DESIGNBASEは機能性能の面ではParasolidよりも良かったんです。でもグローバルな信頼を得るのが難しかった。3Dをこれだけ軽く使えるラティスのXVLなら世界を変えられるのでは、と思いました。ソフトウェアを流通させるよりも、軽量3Dデータフォーマットを流通させる方が楽、その結果、XVLを扱えるソフトウェアが普及するのでは、という戦略もありました。

ーフォーマットを見るためにはソフトウェアも必要ですよね?
当時の無償ビューワはブラウザへのプラグインでした。現在はXVL Web3Dという技術を使って、スマホがあればXVLが見られます。ソフトウェアをインストールしなくてもXVLがあればいい。3次元CADの検定試験があるのですが、その正解もスマホで3Dで見られるようになっているんですよ。

現在のラティスでいろんなサービスDXを進めているのも同じ手法で、顧客のWebサイトにWeb3Dがあれば世界中からサービスパーソンがそこにアクセスして、自分たちのスマホから3Dデータをみることができます。

試しに、スマホでこのQRコードを読み込んでみてください。これは3D図面です。未来はこうやって情報が流通していくでしょう。

ー見ることが目的なら、それで十分ですね。
保守分野の3Dにおいてドイツで大きなシェアを持つQuanos社もXVLを使って同じようなことをしています。、だから、これで世界に挑戦しようと思ったんです。

Casual3Dという言葉の起源は、トヨタ自動車への出資が決まり、IT部門にXVLを説明しに行ったときです。「手軽に誰もが3次元を使えるようになる技術です」と話したら「そんなものはいらない」と言われてしまいました。「手軽に、カジュアルに3次元を使うニーズはトヨタ自動車にはない」というんです。どうしてかというと、「必要な人には3D CADを買うから」「トヨタ自動車にはカジュアルに3次元を使う用途はないから他社をあたってほしい」というんです。

これを聞いて2つ考えました。
ひとつは、「『カジュアルで3D』ってゴロが良いな」ということ。Casual3Dは響きもいいから登録商標にして、マーケットを作れば、誰もやっていなくて、競合はいないはずだと考えました。
もうひとつは、その市場は大きいはずだと考えました。普通の人は3次元CADを使いこなせないし、データは重たいし、そもそも高価。我々は3次元CADを使っている設計以外のマーケットを開拓しようと考えたのです。全社的に見れば、3D CADユーザーは5%。残りの95%に3Dを開放するのがCasual3D、そう考えたわけです。

ー設計の人たちはCADを使っていても、それ以外の人たちは使っていないのは昔から変わっていないんですね。今まさにラティスがやろうとしていることですね。
そう、25年前に作ったコンセプトはずっと変わっていないんですよ。

ー世の中がやっと追いついてきた感じですね。
25年かかって、ようやく3D CADが普及してきました。それでも、CADを誰もが使って、全てのプロダクトを設計できる会社はまだ60%ほどではないかな。
補足すると、3D CADはCATIAとかCreo、NX色々ありますが、ほぼ欧米製です。

ーそうですよね。
でも3D CADの後工程を進める「Casual3D」の世界観を持つソフトはまだないから、ここはメイド・イン・ジャパンのソフトが世界を席巻できるのではとも考えました。

ーこれは当時も25年経った今も変わりませんか?
当時はもちろんそうだし、今はますますそうだと強く思っています。

ー後工程はラティスの入り込む余地がある、だからCasual3Dということですね。
元々の「Casual3D」はもう少しエンタメ向けだったのが、結局ぐっと製造業向け、エンジニアリング向けになってしまったのが想定外だったかな。

ートヨタ自動車との関係はどのようにして始まったのでしょうか?偶然見つけてもらったのでしょうか。それとも鳥谷さんが売り込みに行った中の1社だったのでしょうか?
当時、トヨタ自動車はベンチャー投資をしようとしていました。同じ頃、ラティスでは関係のあったベンチャーキャピタルの担当者に「出資するならビジネスができる大きな相手を連れてきてほしい」とお願いしていました。その結果、トヨタ自動車と話をすることができたのです。
前職でDESIGNBASEを作っていたときにトヨタ自動車の人とつながりがありました。今、取締役としてラティスに関わっている川添さんも、前職からの付き合いです。

ーそんなに長い付き合いなんですね!
トヨタ自動車がベンチャー投資したいという思惑と、3D CADデータを便利に軽快に扱いたいというニーズ、前職からの信頼関係もあって、付き合いが始まりました。

ー全く知らない人が作っているものよりも、知っている人の作っているものの方が信頼できますもんね。
トヨタ自動車と平行して様々な会社にも売り込みに行っていました。その頃はまだ、XVLが何の役に立つかわからなかったんです。そんなところがスタートでした。

ー25年「3Dで世界を変える」「カジュアル3D」を掲げていますが、どれだけ実現できていると思いますか?
全然まだまだ。私の構想の3%くらいですね。
20年前に作った製品は、ようやく今運用できるようになったものも多いんです。当時のITインフラは貧弱で、運用には乗らなかったけど、できるかぎりのことはやっていた。でもまだ使いものにならない、それが実用運用されたのは、コロナ盛りの2021年頃。3Dデータを用意する、サプライヤに協力を求める、社内データのルール整備をする、そういったことに年単位で時間がかかるんだそうです。このあたりのことは、今年出版した「製造業のDXを3Dで加速する」に詳しく書きました。

ー何もやっていないわけではなくて、一気に変えられず少しずつやっているから時間がかかるんですね。
だから、伸びしろはまだまだ大きいビジネスです。

ー創業時からビジョンを掲げられてきた中で、印象に残っていることはありますか?
XVLは発明当時、様々な賞を受賞し注目を集めました。でも、なかなかビジネスに繋がりませんでした。なぜか?ユーザーの困りごとを解決しなかったからです。「あったら面白いけど、なくても困らない」では売れないし消えていく。MUSTのものを作らねばということに気づいたのです。
そんなときに、トヨタ自動車で3D CADを大量に導入して設計したが、3D CADでは車全体が表示できないという課題があると聞きました。車全体を見えるようにしてほしい、できればそれを使って設計の正しさを検証したいというニーズがあると教えてもらったのです。そこで、XVLの軽量化に磨きをかけ、高速で表示できるようにし、干渉を見つけられるようにしたのがXVL Studio Proという製品です。2003年頃だったかな。

そのときに設計部署の担当者がこう言ったんです。「XVLのおかげで自分たちの設計しているものを初めて見ました」。この言葉にいちばん感動しました。
担当者ぞれぞれが3D CADで部品を書いているとき、自分の部品は見えるけど、車全部あわせたら3万点の部品となってCADが落ちてしまう。それがXVLの力によって初めて車全体が見えた、というのが嬉しかったと。そうか、これでXVLはCADではできないことを実現した、新しい世界を築いた、ということに気づいたときが最初にいちばん感動したかな。ついに役に立つことを見つけたぞ!と。

ーいろんな方がトヨタ自動車で使ってもらえるようになったことをターニングポイントにあげていますが、それほど会社にとっても大きな出来事だったんですね。
製造業の王様でもあるトヨタ自動車で使ってもらえるのは会社にとっても名誉だし、世界中の製造業で困ることを他社を差し置いてラティスが解決したということは誇らしいことですね。

2015年中途入社。経理総務をやっているうちに、人に関わる仕事がしたいと思い人事になりました。
1歳男の子のやんちゃっぷりに手を焼きながら「働きやすい会社」ってなんだろうと考える日々です。

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